有機農産物と特別栽培農産物、いったい何が違うのよって、ちゃんと知ってイメージに騙されないようにしましょう~

2021年9月20日

野菜とか、お米とか、農産物の表示のお話です。

有機農産物、特別栽培農産物…最近よく見かけるようになりました。

どちらも、なんだか体によさそうですよね~最近ではちょっと大きいスーパー行くと普通に売ってたりします。

この「有機農産物」と「特別栽培農産物」どちらも体に良さそうですけど…何がちがうんですかって、全然違うんです。(有機農産物を作って、販売していた元農民としてはですね、消費者の皆さんに「特別栽培農産物」って、健康に良さそう~なんて言われると直時イラっとします…)

イメージの問題ですけどね「特別栽培農産物の方が農薬も化学肥料も使ってない厳しい規格なんでしょ」と誤解している消費者の方は結構多くて、多分理由は、有機農産物と特別栽培農産…名前の付け方でしょう。

しょうがない…特別とか言われると、スペシャル感あって、すげーんだなこれってイメージ沸くもん。


結論からいきますと、農薬の使用に関しても、化学肥料の使用に関しても、有機農産物の方が圧倒的に厳しい規格基準になっています。

目次

特別栽培農産物と有機農産物の法律的な違い

法律的に有機農産物表示については、罰則規定のある「有機JAS法」で定められ、特別栽培農産物表示については、罰則規定のないガイドラインが基準になります。

法律で定められていますから、勝手に「有機農産物」表示すると法的に罰せられます。(個人:1年以下の懲役、または100万円以下の罰金、法人:1億円以下の罰金)

特別栽培農産物についてはガイドラインですから…基準から逸脱した表示をしても罰せられません。

例えば、適当な農家の親父がいて「なんとなくうちの野菜特別じゃねっ」て勢いで「特別栽培農産物」って表示して売っても、捕まらない。

一方、有機農産物の表示(有機JASマーク)を付けるためには、農林水産省が認めた登録認定機関の立ち入り調査と監査を受けなければいけません。

実地調査、聞き取り調査、圃場(畑とか田んぼ)の確認、書類審査…書類の準備も大変だし、金もかかる(ただじゃないんだこれが)。

特別栽培と有機…農薬と化学肥料使用についての違い

特別栽培農産物

「特別栽培農産物に関わる表示ガイドライン」では、化学合成された農薬及び肥料の使用を低減することを基本とし…となっています。

農薬(使用回数)、化学肥料(窒素成分量)が慣行レベルの5割以下であること。

使わないではなく、減らすことが基本なんです。

じゃあ、いつから減らすのよってタイミングは「前作の収穫後から~」です。

例えばある畑で普通に農薬、化学肥料を使ってジャガイモ作ったとして、そのあと同じ畑で特別栽培に切り替えるなら、ジャガイモ収穫した後に、農薬も化学肥料もガイドラインに従って減らせばいいんです。

農薬も化学肥料もモノによっては畑に残存しますから、こんな短期間で特別栽培に切り替えても、普通の栽培方法と殆ど変わらりません。(決して言いすぎではないと個人的には考えています)しかも、違反しても罰則規定なし。

有機農産物

有機農産物の場合は「有機農産物の日本農林規格」に~化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として~と書かれてあります。

「避けることを基本として」ってなんだか難しい表現です…使用しないとは書かれていません。

使っちゃだめですよとなりますと「この場合は~」とか「昔から使ってたこの資材は農薬なの?」とか、話をややこしくする人が必ず出てきます(どの世界にもいるでしょこんな人)。

ですので「有機農産物の日本農林規格」で肥料及び土壌改良資材、農薬について、細かく基準が決められています。この基準を守ってねって事です。

注)よく巷で「有機農産物は安全か?」なんて聞きますけど、「有機農産物の日本農林規格」に従って作られたのが有機農産物ですから、それ以上でも、それ以下でもありません。

基本的に、慣行農業(農薬、化学肥料を使用する普通の農業)で使用される殆どの化学肥料と農薬は使用禁止資材です。

ではいつから「化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避け」を始めるのか…多年生作物(リンゴとか、1年以上畑で栽培する作物、牧草を除く)の場合は収穫前3年以上、それ以外の作物の場合は作付け(畑に種まく、苗植えるなど)前2年以上となっています。

有機農産物の表示をするためにはこれだけの時間が必要になります。もちろん有機圃場(畑とか田んぼのこと)であり続けるためには、永遠に「化学的に合成された肥料及び農薬」は使えません。

有機農産物の認証制度

農家のお父さんが「よし、うちは有機農産物を作って販売するぞ~」と決めたんなら、「有機農産物の日本農林規格」を勉強して、規格に沿って2年から3年畑を有機に転換して、そのあと、書類をそろえて、認証機関に申請して、調査と監査を受けて…

やっと晴れて有機農産物が販売できるようになる訳です。

勢いで表示しても罰則されない「特別栽培農産物」と違い、「有機農産物」はこれだけのプロセスがないと表示してはいけないことになっています。

高く売れれば頑張るんですけどね…これがなかなか難しい。

転換期間中有機農産物

めったに見ないですけどね「転換期間中有機農産物」なんてものもあります。これは文字通り、有機に転換している期間中の農産物ってことです。

それまで農薬も化学肥料も使用していた圃場(畑とか田んぼ)を有機圃場に転換したいとき、農薬も化学肥料も使わない期間が2年(多年生作物の場合3年)必要になることは説明しました(くどくてすいません…)

その間、農薬も化学肥料も使えないのですが、有機農産物としても販売できません。

農家さんにしてみれば、頑張って有機農業に転換しようとしているのに、ひどいお話です。そこで、有機に転換している途中ですよ~の意味合いで表示できるのが「転換期間中有機農産物」となります。

1年生作物(種まき、苗植えから1年以内に収穫を迎える作物)の場合は、有機の栽培規格に切り替えてから1年以上経過後2年目まで、多年生作物の場合は2年以上3年目までが「転換期間中有機農産物」となります…そのあとは有機農産物に格上げですね。

※もちろん「転換期間中有機農産物」も認定機関の監査を受けなくては表示できませんから、特別栽培農産物よりも厳しい規格基準で栽培された農産物であることは変わりません。

おしまい

表示の違いを簡単に説明するとこんな感じです…まあ、人によって受け止め方は違うんでしょうけど、ほとんど値段の変わらない「特別栽培農産物」と「有機農産物」売ってたら、迷わず「有機農産物」を買うべきです。

特別栽培農産物と有機農産物の違いについてでした。