【家庭菜園】防寒対策「不織布、寒冷紗、ビニールトンネル」いつ使うべきか、どの方法を選ぶべきか、基本的な使用方法

2023年3月21日

<この記事の内容>
露地(ハウスではない)の畑で使用するごく代表的な防寒資材と使用目的、使用方法を説明しています…使用方法は「農家さんがよく使う方法」で紹介しています。

目次

不織布(パオパオ)とは?

だれがこんな名前を付けたのか知りませんけど、全国的に農家さんはこの資材のことを「パオパオ」と呼んでいます。プロご用達の資材屋さんに発注するときも「幅○○のパオパオ100m巻ちょうだい」なんて会話(知らなきゃ意味不明)です。

ホームセンターの家庭菜園資材コーナーに行くと「不織布」の名称で売られています。

ホームセンターの不織布と寒冷紗売り場
お好みの長さを計り売りしてくれるホームセンターさんもあります

主な使用方法はいわゆるべたがけです⇒後で説明するトンネルのように、支柱を立てて資材を持ち上げず、作物にべったと乗っけて使うことが多いです。

不織布でべたがけする効果は?|防寒効果はどのくらい?

不織布でべた掛けする効果は…①防寒②霜よけ③防虫④防鳥③発芽促進、活着促進、生育促進になります。

①防寒効果
 不織布でべた掛けすると、地表面の温度は日中で2~3℃、夜間で1℃前後(晴天時))上昇します。真冬の寒さを凌ぐ程の保温力はありませんが、春先や秋から冬にかけて、季節の変わり目には十分な防寒効果を発揮します。

②霜よけ効果
 不織布でべた掛けしても夜間で1℃前後しか地温は上がりませんから、毎日霜が降りる真冬に霜よけ効果は期待できません。
 不織布で霜よけ効果を期待できるのは真冬の前後、霜の季節が始まるか終わる頃です⇒「春先の遅霜対策」や「秋の終わりに収穫間近の野菜を霜から守る」使い方になります。

③防虫効果
 不織布のべた掛けで害虫対策できます⇒例)大根や白菜などのアブラナ科野菜は発芽直後にキスジノミハムシの被害にあうことが多いのですが、不織布のべた掛けで防虫可能です。

④防鳥効果
 豆類やトウモロコシの種まきをするとカラスがどこからともなくやって来て、種をほじくり返してしまうのですが…不織布のべた掛けで被害を防ぐことができます。

⑤発芽促進、活着促進
 不織布でべた掛けすると、土の渇きを抑え、地表の水分を保つことができます⇒種が発芽するのに必要な水分、植えた苗が地面に活着(根が付く)するのに必要な水分を保つ効果があります。

「べたがけ」して発芽、本葉が出始めた小松菜です
参考資料

「不織布のべた掛けで保温効果が何℃あるのか」についてはこちらの資料を参考にしました。
J‐STAGE「不織布の農業資材分野への展開」
J‐STAGE 「べたがけが表層土壌環境と出芽に及ぼす影響」

不織布(パオパオ)の使用例

・春先(まだ気温が十分ではない頃):種まき直後に「パオパオべたがけ」⇒種が発芽(芽が出て)して、作物がある程度成長した段階で撤去(パオパオをはがす)※ついでに、発芽直後の害虫被害(大根、カブなどのキスジミノハムシ被害とか)を防止する効果も期待できます。

・秋口(朝晩の気温が下がり始めた頃):種まき直後に「パオパオべたがけ」使用⇒種が発芽して「べたがけ」したままで栽培することもあり。

「べたがけ」したまま栽培した秋の水菜…
育ちすぎてパンパンになっちゃった

・冬:成長した作物が霜や寒さで痛むのを防止するために「べたがけ」使用します。※この場合「べたがけ」で野菜の成長を促進することは期待しません。

余談ですが…難易度の高いパオパオ使用方法として、真夏に人参の芽出しに必要な水分を確保するために、人参種まきから発根までのごくわずかなタイミングで「べたがけ」することもあります。
※ただしこの方法、パオパオ撤去のタイミングを逃すと全滅レベルの失敗を招きます(経験ありw)。

寒冷紗とは?

ホームセンターに行けば「寒冷紗」の名前で売ってます。

パオパオは触った感じ「布」ですが、寒冷紗をあえて表現すれば「ちょっとゴワゴワした網目の細かいネット」

寒冷紗の主な使い方はトンネル支柱を立てて、作物を覆ってあげる方法です。

いろんな効果があって、夏は暑さを避けて(遮光)、秋から冬にかけては保温効果と霜よけ、さらに防虫効果も期待できちゃう優れものです。

これはもう、実例を見てもらったほうが早いので、写真で説明しますね。

寒さ対策の寒冷紗使用例

1月のほうれん草畑(埼玉)…寒冷紗で防寒対策
上の写真の寒冷紗トンネルの中
厳寒期ですが寒さで痛むことなく、ほうれん草つやつやしてます

暑さ対策の寒冷紗使用例

9月の青梗菜(埼玉)…
暑さ対策として寒冷紗を使ってます
寒冷紗をはがして収穫中の青梗菜
青梗菜、小松菜、水菜などのアブラナ科野菜は暑さに弱く
夏場の害虫被害も多いのですが、キレイに育ってます

ビニールトンネルとは?

パオパオ、寒冷紗と比較すれば、抜群に保温効果が高い方法になります。

見た目ビニールなのですが、いろんな素材のものがありまして、農ポリ(ポリエチレンシート)、農ビ(塩化ビニールシート)農PO(ポリオレフィン系特殊シート)などなど、素材によって保温効果、扱いやすさ、値段が変わってきます。

とりあえず、農ビ(塩化ビニールシート)が一番保温効果が高いってことだけ覚えておきましょう。

パオパオや寒冷紗は寒さから作物を守ることを目的に使いますが、ビニールトンネルは気温の低い時期に作物の生育に必要な温度を積極的に確保するためにも使われます。

・春口、まだ寒さが残る時期に早めの作付けを狙って、種まきや苗植えした後にビニールトンネルを設置する。例えば…2月に人参の種まきをするとか、3月~4月にかけて夏野菜の苗を植えるとか

・秋の終わりに種まきをして、ビニールトンネルで温度を確保しながら、真冬にゆっくり作物を育てるとか。厳寒期のほうれん草栽培など…

使用方法は支柱を立てて、ビニールを張る方法です。その中に太陽の熱を蓄えて作物の周りの温度をあげることができます。

パオパオ(不織布)や寒冷紗は保温、寒さよけで使いますが、ビニールトンネルは積極的に温度を上げる目的で使うので、ちょっと性質が異なる資材と考えたほうがいいかもしれません。

野菜作り初心者
野菜作り初心者
すごいじゃんビニールトンネル
農家のおじさん
農家のおじさん
使いこなせれば、作付けや収穫時期の幅がぐっと広がる優れものの資材なんじゃよ。但し、注意点もあるので気をつけてな

人の手を加えた温度管理になるので、管理を怠ると温度を上げすぎて作物を焼き殺してしまう恐れもあります。※人の都合で自然界の温度や水分をコントロールしようとすれば、必ずリスクが発生してしまうものなんです。

厳寒期とはいえ、ビニールトンネルで密閉すると天気のいい日はあっという間に高温になってしまいます。そこで、農家さんは午前中、気温が上がる時間(大体9:00~11:00)にトンネルの裾を開けて換気、天気を見ながら、今度は午後気温の下がる時間(15:00頃~)に裾を閉めて、暖かい空気を閉じ込め、そのまま次の日まで閉めっぱなしにする管理を繰り返します。

ところが、大規模の農家さんになるとこの管理をやり切れませんし、家庭菜園では畑に頻繁にいけない方がほとんどです。その場合には、換気の必要のない、穴あきのトンネル資材が使われます。もちろん、穴なしトンネルに比べれば保温効果は劣りますが、管理不足で野菜をダメにするリスクはぐっと減るので安心です。

穴あきビニールトンネルです。

おわりに

不織布、寒冷紗、ビニールトンネルについて解説しましたが、他にも便利な防寒資材はありますし、紹介した資材の使用方法(タイミングも)も様々です。家庭菜園ですからね、いろいろ試して、自分好みの方法を探すのも楽しいですよ。

昨年は寒さで惨敗したけど、今年はこれでいけんじゃね?みたいな感じで

防寒資材を使って、狙った通りに作物が育つとちょっと嬉しくなっちゃいます。

是非是非トライしてみてください‼